鬼部長と偽装恋愛はじめました
私の返事に、祐平はなにも言わず、代わりに小さくため息をつく。
「オレさ、香奈美から最初に彼氏役を頼まれたとき、冗談じゃないって思ったんだよ」
「そりゃあ、そうですよね。すみません……」
小さくなるしかない私は、肩をすくめた。
今でも、頼んだときに見せた祐平のしかめっ面は思い出せる。
「あのときは、香奈美の真意が分からなかったからな。でも、仕事に対する意気込みは伝わったし、日頃から頑張りを評価していたのも本当だ」
「あ、ありがとう……」
ハンドルを握る祐平は、目を真っ直ぐ前を向いたまま。
でもその横顔からでも、真剣な表情なのは分かった。
私はとにかく照れくさくて、目を車窓からの景色に移す。
「だから、今のこの状況は、後悔はしてない。お前はどうか分からないけど……。だいたいオレは、興味のない女には、本当に興味がないから」
「祐平……。私も、後悔してない……というより、私が決めて祐平を巻き込んだんだから」
と言うと、ちょうど赤信号で車は停まり、祐平が私を見た。
それはこの一年、会社でも見たことない優しい笑みを浮かべた顔で、私は今日一番に胸を高鳴らせた。
「オレさ、香奈美から最初に彼氏役を頼まれたとき、冗談じゃないって思ったんだよ」
「そりゃあ、そうですよね。すみません……」
小さくなるしかない私は、肩をすくめた。
今でも、頼んだときに見せた祐平のしかめっ面は思い出せる。
「あのときは、香奈美の真意が分からなかったからな。でも、仕事に対する意気込みは伝わったし、日頃から頑張りを評価していたのも本当だ」
「あ、ありがとう……」
ハンドルを握る祐平は、目を真っ直ぐ前を向いたまま。
でもその横顔からでも、真剣な表情なのは分かった。
私はとにかく照れくさくて、目を車窓からの景色に移す。
「だから、今のこの状況は、後悔はしてない。お前はどうか分からないけど……。だいたいオレは、興味のない女には、本当に興味がないから」
「祐平……。私も、後悔してない……というより、私が決めて祐平を巻き込んだんだから」
と言うと、ちょうど赤信号で車は停まり、祐平が私を見た。
それはこの一年、会社でも見たことない優しい笑みを浮かべた顔で、私は今日一番に胸を高鳴らせた。