鬼部長と偽装恋愛はじめました
「すごい……。バリバリのキャリアウーマンなんだ。その人とは別れたってこと?」

なぜだか、胸がザワザワする。

自分で聞いたくせに、胸が苦しい。

「じゃなきゃ、お前の恋人役は引き受けないよ。日本に帰国したときに、別れたんだ」

そう言って祐平は、残りのワインを飲み干した。

「そろそろ、寝る準備をしよう。明日はお互い仕事だろ」

「う、うん。祐平は、聞かないの? 私の元カレとか……」

「別に、知りたくない」

ぶっきらぼうに言うと、祐平は先に部屋へ入った。

帰国と同時に別れたんなら、まだ一年ちょっとしか時間が過ぎてない。

未練とかないのかな……。

なんで、こんなに気になるのかが分からないけど、モヤモヤしながら私もリビングへ戻った。

「あ、そうだ。香奈美。お前のベッドないだろ? 布団の予備がなくてさ、寝る場所ここになるんだけど」

祐平が指差している部屋へ駆けて行くと、そこにはキングサイズのベッドがひとつ、存在感たっぷりに置かれていた。
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