鬼部長と偽装恋愛はじめました
田中さんは、私のパソコンに目をやり、企画書の中身を確認している。

「そんなに急がないといけないんですか? まだ期限じゃないですけど……」

「ああ。この企画書が完成して、最終チェックは部長になるんだけど、意外と時間がかかるんだよ。本城は気に入らないかもしれないけど、一応上司のために頑張ってみるか」

「は、はい……」

そんなに大変だなんて、知らなかった……。

祐平は、とにかく期限内に提出しろとしか言わなかったし。

「だけど、本城も大変だよな。 営業からあれ作れ、これしろって言われてさ」

田中さんは目をパソコンにやったまま、呟くように言った。

「いえ、それが仕事ですから」

苦笑いをしながら答えると、田中さんは笑顔で私を見た。

「本城ってさ、仕事に一生懸命で、オレたちもつい頼りたくなるんだよ。部長がよく言うんだ。大事な内容ほど、本城に頼んだらいいって」

「え? 本当ですか? 信じられない……」

目を丸くすると、田中さんは耳元で囁くように言った。

「オレが喋ったって知られたら、叱られそうだから内緒な。部長は、本城のことをかなり買ってる。だから、頑張るれよ」
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