鬼部長と偽装恋愛はじめました
祐平が、私をそんな風に評価してくれてるなんて、思ってもみなかった。

仕事には厳しいことで有名な彼が、田中さんたちに言ってくれていたことは、素直に嬉しい……。

「よし、できた。これでいいんじゃないか? 早く部長に提出してきたらいいよ」

「はい! 田中さん、本当にありがとうございました」

一時間以内に修正できた企画書は、田中さんのアドバイスもあり、本当に良くなったと思う。

急いで祐平のところへ持っていくと、メモリを受け取った彼がぶっきらぼうに言った。

「実際にプロジェクターに映してみたいから、一緒に会議室に来てくれるか?」

「はい、分かりました」

そっか、そういう確認もあるから、時間がかかるんだ……。

祐平について一度オフィスを出ると、廊下奥の会議室へ向かう。

そこは五十人ほどが集まれる会議室で、中に入るとすぐに、祐平が鍵を閉めた。

「なあ、香奈美。お前、ずいぶん田中と楽しそうに仕事してたじゃん」

祐平は私の顎を引き上げて、仏頂面で言った。

「あ、あれは、田中さんが企画書作りにアドバイスをくれてたからで……」

どうやら、見られていたみたいだけど、それをこうやって聞かれたことに動揺していた。
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