鬼部長と偽装恋愛はじめました
まさか、それを言うために、私を会議室に連れ出したんだろうか。

メモリの中身も、一向に確認する様子もない。

「その割には、あいつ香奈美に耳元でなにか言ってたよな。なにを言われたんだ?」

「そんなところも見てたの⁉︎ 普段、私のことなんて全然見てないじゃない」

「見てたよ。お前が気がつかなかっただけだろ? 香奈美の仕事ぶりは、オレが一番よく見てる」

そう言った祐平は、私にキスをした。

顎を引き上げたまま、何度も深いキスをする。

「ん……祐平。ここ会社だよ……」

唇を離し、頭が少しボーッとしながら祐平を見上げる。

すると祐平は、私の腰に手をまわして引き寄せた。

「ふたりきりなんだから、いいだろ? それより、田中になに言われたんだよ」

「仕事のアドバイス……。いつも、応援してくれてるから」

「ホントに?」

祐平は濡れた私の唇を指で拭きながら、私を真っ直ぐ見つめる。

「ホントだよ。なんで、そんなこと聞くの?」
< 62 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop