鬼部長と偽装恋愛はじめました
こんな場所へ呼び出してまで聞くなんて、祐平の会社での印象からでは想像ができない。

社内の祐平は、ストイックな感じなのに。

「オレ、お前が好きだから。本当は、ずっと好きだったんだと思う。それに、気付こうとしなかっただけなんだろうな」

「え……?」

祐平が私をずっと好きだった……?

優しく笑みを浮かべた祐平は、ア然としている私に、もう一度キスをした。

「イヤなんだよ、香奈美が他の男と親しげにするのを見るのは。誰とも話すなとは言わない。でも、仕事で困ったら、オレにも頼れよ。ちゃんと教えるから」

「うん……」

祐平、ヤキモチ妬いてたんだ。

なんだろう、この嬉しい気持ちは……。

仕事ぶりを一番よく見てるって言ってくれたことも、好きだと言ってくれたことも、そして、私だけに見せる素顔も……。

全部が嬉しくて、温かい気持ちになって、心が満たされていく。

「私も、祐平が好きだよ……」

気がついたら、その言葉が口から出ていた。
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