鬼部長と偽装恋愛はじめました
結構真剣に言うから、私は思わず苦笑した。

「ふふ……。最初から、誰も入り込んでないよ」

「田中がいるだろ? それに、オレが知らないだけで、他にいるかもしれないし」

「田中さんは、祐平の誤解だって。心配することなんて、全然ないのに」

まだ田中さんにこだわっていて、ついおかしくなってくる。

半分苦笑いの私に、祐平はムッとした。

「香奈美が、気づいてないだけだ。オレはもうお前との関係を、お母さんを誤魔化すための偽装だと思ってないから」

「もちろん、それは私も一緒よ。きっかけはそうだったけど、今はこうなれて良かったって思ってる」

祐平の胸に顔を埋めると、ギュッと抱きしめられた。

あんなに苦手に感じていた人なのに、今はその温もりに安らぎを感じる。

そう思いながら私は、いつの間にか眠りに落ちていた。
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