鬼部長と偽装恋愛はじめました
「え? なんで、そんな風に思われるんですか?」

「祐平が優しかったから。昨日、本城さんのこと心配してたじゃない? その心配の仕方がね、普通の関係じゃないんだって感じたのよ」

さすが、祐平のことをよく分かってるみたい。

自分のなかに、嫉妬が渦巻くのが分かって胸が痛い。

「否定しないということは、図星ってことね。羨ましいな。私、祐平をもう一度、ニューヨークに連れ戻したいと思ってるんです。来週には帰国するから、それまでにアプローチさせてもらいますね」

「えっ……?」

余裕たっぷりの笑みをみせた香坂さんに、私は言葉を詰まらせた。

ふたりは、割り切って別れたわけじゃないってこと?

頭のなかが混乱しながら、オフィスに戻る。

祐平は相変わらず仕事に忙しそうで、営業さんに厳しい言葉をかけていた。

香坂さんのことを話すときの祐平は、まるで平然としていて、私に彼女との関係を話す気はないのかと勘繰りそうなほどに。

それは、彼女に未練がないから?

それとも、やましいことがあるから?

私にはまだ、祐平の心の内は分からない……。
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