鬼部長と偽装恋愛はじめました
振り向くと、スーツ姿の佐原さんが立っている。

「佐原さん⁉︎ こちらに来られてるんですか?」

慌てて立ち上がると、佐原さんはニコリと笑顔を浮かべた。

「ああ。学会でね。日曜日には帰るんだけど、ここで会えるとは思わなかったな」

「そうですね……」

まさか、本当に再会するとは思わなくて、戸惑いが隠せない。

気まずさもあるし、なにを話せばいいんだろう。

「なあ、香奈美ちゃん。今日か明日の夜でも、時間をもらえないかな? きちんと話しがしたくて」

「は、はい。あの今夜なら……大丈夫です」

そうよね、私のなかではお見合いの話は解決したけど、佐原さんのなかでは納得できてないんだ……。

そもそも、私と祐平の仲を疑ってたみたいだし。

ここで再会できたのは、良かったのかもしれない。

きちんと話しをして、謝ろう。

「じゃあ、連絡先を教えてくれる? オレは七時頃には時間が作れるから、電話するよ」

佐原さんにそう言われ、番号交換をする。

そんな私たちのやり取りを、真由は不安そうに見ていた。
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