鬼部長と偽装恋愛はじめました
佐原さんが帰っていったのを見送ると、真由がため息混じりに言った。

「あの人が、お見合い相手なんだ。結構イケメンだし、開業医なんてステータス高いのね。一緒にいた人たちも、お医者さんってことか」

「うん。きっと、そうだと思う」

どうやら、佐原さんはお医者さん仲間とお昼に来ていたらしい。

ここへは私も頻繁に来店するわけじゃないのに、再会したことになにか特別な意味を感じる。

「佐原さんって人、香奈美に名残惜しそうだったし、なかなか手強そうだけど」

真由の指摘に、私は苦笑する。

「佐原さんも、半分意地になってるとこもあるんじゃないかな? 祐平と知り合いだったから」

「ふぅん。たしかに、最初の香奈美のお芝居を見抜かれていたとしたら、かなりプライド傷つけられただろうしね」

「うん。だから、やっぱりきちんと話して謝らないといけないよね」

ちょうど今夜も祐平は遅いから、佐原さんに会う時間も作れる。

明日は私も祐平も仕事が休みだから、ゆっくり佐原さんのことや香坂さんの話をしてみよう。
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