鬼部長と偽装恋愛はじめました
一九時前、仕事を終えて帰ろうとすると、真由はまだデスクでパソコンを叩いている。

「あれ? 真由帰らないの?」

今日は、そんなに押してる仕事はないのにといぶかしげに見る。

「うん。ちょっと、今日中にやり終えたい仕事があって……」

「そうなの? だったら、私も手伝うよ?」

そんなに急ぎの仕事が、残ってたとは思わなかった。

持っていたバッグを下に置こうとした瞬間、真由が慌てて制した。

「いいの、いいの。すぐ終わるから。それより、香奈美は約束があるでしょ? 早く帰れる日くらい、退社しなよ」

「う、うん。真由が大丈夫ならいいけど。じゃあ、お疲れ」

「ありがと、香奈美。お疲れ」

真由の様子から、私が手伝うことに都合が悪く感じられる。

どうしたんだろう……と気にかかりつつも、オフィスを出たところで佐原さんから電話がきて、意識はそっちへ集中した。
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