鬼部長と偽装恋愛はじめました
ほどなくして香坂さんが上がってくると、彼女は私を見て目を丸くしている。

「そっか。本城さん、付き合ってるんですよね。邪魔してごめんなさい」

「いえ。むしろ、私の方が邪魔でしたら、出かけますけど……」

ふたりにするのは不安があるけど、祐平なら信じられる。

つまらない嫉妬を彼女の前で見せたくなかったのは、私の女としてのプライドからかもしれない。

「いいえ。むしろ、聞いてもらった方がいいかも。祐平、どう?」

香坂さんは祐平に目を向けて、彼の意見を聞いている。

すると祐平は、ぶっきらぼうに答えた。

「オレは、それでいい。そもそも、香奈美が気を遣う必要はないから」

本当にいいのかなと思いつつ、祐平の言葉に従う。

そして香坂さんは、靴を脱ぎながら淡々と言った。

「相変わらず、冷たい言い方をするのね。まあ、いいや。それより、話をしましょ」

「分かった。だけど、何度言われても答えは同じだからな」

祐平は香坂さんをリビングに促すと、ソファーへ案内した。
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