新撰組綺談~悠月ナ草~
食堂の窓から、屯所の門に沖田一番組が帰ってくるのが見えた。
沖田はこちらを見るとずかずか進んできた。
沖田は、食堂の扉を無造作に開けた。
…何やら、とても難しそうで深刻な顔をしていた。
「沖田さん!昨晩のことなんですけ………」
「斎藤君。緊急の組長会議です。出席してください」
千秋の呼び掛けにこたえることなく、沖田は斎藤を呼んだ。
「え??」
驚いた千秋とは反対に、斎藤は落ち着いていた。
「………」
沖田の真剣な顔をみた斎藤は、無言でうなずき、ご飯をよそおっていたしゃもじを千秋に渡し、沖田と共に出ていってしまった。
「……なんなのよ」
食堂に、一人の千秋。
……さっき、沖田はまるで自分のことなど見ていなかった。
(だけど、なにか深刻なことが起こっているような気がする。)
自分なぞ、目に入らないほどの、何かが。
千秋は不安がる気持ちをぎゅっとにぎりしめ、
沖田と斎藤の背広をただただ見つめたのであった。