新撰組綺談~悠月ナ草~
「ここに集まってもらったのは他でもない。」
幕末の時代には珍しい円卓に、沖田と斎藤が座り、
近藤を見つめる。
「ここ最近この紫前町でさわがれている”人斬り”についてだ」
「人斬り…」
斎藤は、少し驚いたように目を見張る。
「ここのところ、紫前町全体…特に西部で、町人が何人も誰かの手によって斬られているという情報を耳にした。
何人も殺されているにもかかわらず、その犯人は、一人での犯行と推測できる。」
「局長…それはなぜ?」
齋藤が、少し背を伸ばして聞く。
「”殺し方”だ。その人斬りは、一度刀を持っているにも関わらず、相手を首を絞め、窒息死(ちっそくし)させてからもう刺すそうだ。」
遺体には首をしめた痕(あと)が残っていたのだ、
と近藤は付け加える。
「残忍(ざんにん)ですね……」
沖田がみけんにシワを寄せる。
「もっと事が大きくなってから新選組としては動こうかと思っていたのだが、今は京への遠征に歳三も、山南さんもこの屯所から出ている。」
五人がけの円卓に、近藤、斎藤、沖田の三人がすわっているが、
土方と山南の席分の、2席分が空いている。
「組長や組員が2組でて、少なっている今、早めの対応をしておかなければならないと判断して、二人には集まってもらった。」
「そういうことだったのですか…」
斎藤は神妙(しんみょう)な顔つきで近藤を見る。