新撰組綺談~悠月ナ草~
「そこの坊主」
「は、はい」
声が震える。
「……目をつむってろ」
声主から目を閉じるよう命令される。
低く冷徹なはずの声が、そのワードだけは優しく感じた。
「は、はい」
千秋はギュッと目をつむった。
千秋が目をつむったことを確認した声主は
帯刀していた刀を、峰打ち(みねうち)の向きにして、軽々と引き抜いた。
「なんだ!お前!う、動くなよ!!その刀を捨てろ!!この坊主がどうなってもいいのか!!」
千秋を拘束している男は、震え声で言い放つ。
「……半端な覚悟しか持ってねえ奴が、刃物なんか持つんじゃねえ!!!!」
キン!!!!
冷徹な金属音が一帯に響き渡る。
声主が、疾風のごとき速さで、男の持っていた刃物をなぎ払った。
「いたっ!!!」
そのなぎ払った男の刃物が宙をまい、
刃先が千秋のほほをかすめたのだ。
突然の痛みに、目をつむっていろと言われていたが、千秋は驚きのあまり、目を開いた。
そこには、
今まで自分を拘束していた男が震えながら倒れていた。
声主が、男に峰打ち(みねうち)を放ったのだ。