新撰組綺談~悠月ナ草~
「そういうものなんですか?」
なんだかよくわからない、とごにょごにょ男は言いつつ、男は笑う。
(本当、何なのこの人…どこかおかしいし、なんだか本心で接してる感じがしない人だなあ…)
千秋が疑り深い目で見ていると
笑った男が、奥にいた男性を紹介した。
男がおどかしてきたせいで、
千秋も男と一緒に入ってきたはずの男性の存在に、今気づいた。
その入ってきた男性を、紹介してくれる。
「この人は、齋藤一(さいとうはじめ)。
俺の同僚です。」
男はまた、ニコリと笑う。
齋藤は、礼儀正しく千秋に頭をぺこりと下げ、会釈(えしゃく)してくれる。
それに合わせて千秋も深々と頭を下げた。
「んで、齋藤君、こっちは…えーっと、
あんたの名前、何?」
齋藤に千秋を紹介しようとしたが、千秋が男の名を知らないのと同じで、男も千秋の名を知らなかった。
「桜賀 千秋です」
名前を名乗ると、
齋藤はふわりとほほえんだ。
「千秋か。よろしくな。
ところで総司はなぜ千秋の名前を知らなかったんだ」
「だって、この子、川に落ちてたんだよ?」
“名前を聞くことすら忘れてたよ”と言い、思い出し笑いする。
…なんだか失礼で意地悪だなあ、この男。
「千秋ちゃん。俺は、沖田総司。
新撰組一番隊組長だよ。
ここにいる齋藤君は、三番隊組長だよ。」
(…え?)
この人たち、今
新撰組って言った…!?!?!?!?
それにこの失礼で意地悪そうな男は、
あの、教科書でよくみる沖田総司…!?!?!?!?
「えええええええええええ!?!?!?!?!?」
千秋は、この屋敷全体に響き渡り、聞こえるんじゃないかというような大声で
驚いた。