新撰組綺談~悠月ナ草~
苛立った様子の沖田は、この部屋からズカズカと出て行った。
「悪いな、総司が失礼なことを言って」
斎藤に深々と謝られる。
「いや、全然大丈夫ですよ!」
齋藤には非は全くない。
千秋は慌てて否定した。
「総司も似たような境遇だったんだ」
齋藤はキセルで紫煙(しえん)をくゆらせる。
「ああ、すまない、服を渡すのを忘れていたな」
齋藤は千秋の濡れたスウェットの格好をじろりとみたあと
思い出したように齋藤は綺麗な梅の花がデザインされた着物を千秋に渡した。
「俺を呼んで、ここに来る途中、総司が選んだものだ」
齋藤ははにかむ。
キセルで煙を吸っている姿は何物にも言いがたいほど、色っぽい。
そんな斎藤を見て、なんだか見ていられない気持ちになった千秋は顔を赤くし、慌てる。
斎藤から渡された着物を急いで受け取り、
「斉藤さん、ちょっと横の部屋使わせてもらいますね!!」
そう言い、隣の部屋のふすまを開け、着替えに入った。
そんな挙動不審な千秋を見て、斎藤はフッとほほえんだのだった。