新撰組綺談~悠月ナ草~
「うーん、それはだなぁ…」
千秋の言葉を聞いて、
近藤は答えを出せず、深く考えている様子だ。
そんな近藤を見て、斎藤はひとつ笑った。
「千秋、ここは新選組屯所だ。
元より、京の治安維持など、”人々の味方”だ。それに、この屯所は、新選組の屯所になる前この建物は、孤児や身寄りのないものが共に暮らす所だったのだ。
だが、経営難でやっていけず、廃屋となっていたところを近藤さんは復興(ふっこう)し、新選組の屯所とした。
だから新選組屯所としての機能も果たしているが、もとの困った人々を助ける場所として機能していたことをちゃんと近藤さんは受け取り、
身寄りのない者や、孤児など、気にせず誰でも住まわせている。…当たり前のように。
昔から。
なので、誰彼構わず住ませる理由を改めて聞かれても、答えづらいというものだ」
と斎藤は言い、”近藤さんほど人がいい人はいないぞ”と、付け加えた。
(現代には、こんな粋(いき)な人たちいないよなあ…)
千秋は、感心した。
おじいちゃんをのぞいて、いままで批判を言う人、自分の利益を優先する人ばかりしか、
千秋の目にはうつってこなかったからだ。
「まあ、そういうことだな。
だが俺はそんな立派な男ではないぞ?」
近藤は斎藤の説明を聞いて、ワハハ、と大口を開けて笑う。