新撰組綺談~悠月ナ草~
「せっかくここは俺のお気に入りの場所だったんですけどね……一人で囲炉裏を独占できるので穴場だったんですが、もう使えませんね。」
沖田は残念、といった様子でため息を吐いた。
(沖田さんはこの部屋の囲炉裏にあたたまりに来たのかな………)
「沖田さん、私のことは気にせずあたたまりに来たらいいじゃないですか?」
千秋は新しく住まわせてもらう身分の自分のせいで、誰かが我慢したり迷惑になることは避けたかった。
「え?」
千秋の提案に沖田は驚き、目を見張っている。
そして喉奥(のどおく)でクッと笑った。
そしてなぜか千秋に近づき、あご下を持ち上げられ、目線を合わせさせられた。
(ち、近い…)
「分かってんですか?俺は男ですよ?
あんたにもしかしたら何かするかもしれませんけど?」
沖田は何やら意地の悪い笑みを浮かべる。
「何をって何ですか??」
千秋はストレートに返す。
千秋の返答を聞いて、
沖田は千秋に聞こえないように”コイツ、天然なんですね…”とぼそっと言った。
「あんた、本当に面白い人ですね。
斬る、斬るって言ってるヤツを自室に招き入れるようなこと言って。」
「おかしいですか?
だって、囲炉裏であたたまるときは、一人であたたまるより誰かとあたたまった方がいいですし」