新撰組綺談~悠月ナ草~


街頭の光はなく、月の光だけが千秋を寂しく照らす。



こんな時間になっても誰も探しに来ない…



千秋は力ない笑みを浮かべる。

千秋は、携帯を再度取り出し、
なんとなく画像フォルダを見た。




一枚目は、部屋のぬいぐるみの写真。

二枚目、三枚目、とドラッグして行く。




次々と写真を飛ばしながら見ていると

ひとつの写真で指が止まった。


「あ…、」



画面には、千秋のおじいちゃんと千秋が笑っている写真が浮かび上がっていた。



共働きの両親に変わって親の役割をしていてくれたのは、いつだっておじいちゃんだった。
だが、おじいちゃんは昨年亡くなってしまった。
年をとるにつれて、昔陰性だったガンが陽性になって転移したのだ。



「私の居場所は、ここしかなかったのに…」
携帯の液晶に、ひとつ、ふたつ、みっつと、涙がこぼれ落ちる。


鳥居から離れ、神社の階段に座る。




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