新撰組綺談~悠月ナ草~
「わ、わかりました。でも男性用の着物なんて私もっていませんよ?」
千秋は着の身着のままここに置いて貰っている身だ。着物なぞ一着も持っていない。
少し心配すると、近藤はそんなこと気にしなくて良いのに、とふっとわらった。
「あぁ、それなら大丈夫だ。総司が童(わらべ)の頃辺りに来ていた、千秋さんにぴったりの着物があるだろう」
「そうなんですか、じゃあそれを頂けますか…?」
「おう、ちょっと待ってて」
近藤さんはそう言うと、千秋の自室から着物を取ってくるために出ていった。
(男装して京の町をあるくなんて、なんだか素敵だなぁ)
現代にいてはまるでできない経験だ。
(でも、沖田さんの着物をあたしが着るなんて知ったら、沖田さん怒りそう)
まぁそのときは“近藤さんが用意してくれた”っていったらなにも言えなくなるだろう
少し、沖田さんをコントロールする方法がわかって
千秋は悦に入ったのだった。