新撰組綺談~悠月ナ草~
「な、何の声!?!?」
千秋は勢いよく、目が覚めた。
というか、どこからか聞こえてくる大きすぎる声に、目を覚めさせられたといった方が適切なのかも知れない。
千秋は自室の布団から飛び起き、
急いで外に出て状況を把握するために
男装を手際よく装(よそお)った。
そして、勢いよく襖(ふすま)を開け、
大きな声のする、屯所の門前の方へと走っていく。
バックにウオオオオオオオオ!!!という声を聞きながら、その声の主達を見ると
「何事ですか!?!?」
「あ、千秋か。おはよう」
息汗きって走ってきた千秋とは対照に、
涼しい顔をして組員の指導をする斎藤と、
上半身をはだけさせ
木刀を素振りしている組員たちがいた。
そして、他のまわりの組員を見てみると、
スクワットしていたり、腕立て伏せをしていたり
体を鍛えているようだった。
「どうかしたのか?」
斎藤は何事ですか!?!?といきなり走ってきた千秋になにかあったのかも聞く。
…この状況は、私の勘違いだよね…
この大きな声は、新撰組の組員たちの鍛練時に出る声だったのね…
じわじわ頬が熱くなってくる。
「あ、いや……朝起きたら凄い声がしたもので、てっきり、襲撃とかにあってるのかと…思ってしまい」
すみません
と、勘違いして赤くなった頬をうつむかせる。
赤くなっている千秋を見て、斎藤はさも可笑(おか)しそうに笑った。
「あぁ、そういうことか。
…俺達新撰組は、毎朝鍛練が義務付けられているんだ。
何せ、新撰組は刀を使ったり、戦闘に陥(おちい)ったりする組織だからな」
「なるほど…そういうことですか!
皆さん頑張っていて凄いですね」
「いつだってこの仕事は死と隣り合わせだからな。
俺は三番隊組長として負傷者を出さないためにも、組員たちには鍛練を欠かさないように指導している。」