新撰組綺談~悠月ナ草~
千秋がその場で足を止めていると
目の前で先に進んでいた組員たちの列が止まった。
そして、列の先頭にいたはずの沖田が、隣に立っていた。
!?!?
「あーあ。
もう終わっちゃいましたか」
沖田が、
気の抜けたトーンで話し掛けてくる。
なんだか面白いことが終わってしまったような顔をしている。
その態度を見ると、
千秋はこう思った
「沖田さん…私の困った顔見るために
組員たちに何も言わずに巡察を開始したのですか…っ?」
「なんだ、分かってたんですか」
沖田は可笑しそうにくすっと笑った。
「最低このクソ野郎」
千秋は沖田だけに聞こえるような声で、ボソッと言った。
すると、満足そうに沖田は笑みを深めた。
(ななんなんだこの男…!
昨日の美しいとかいう言葉にほだされかかってた私が馬鹿みたいっ)
「まあまぁ、落ち着いてくださいよ。
お詫びに、俺の隣にいさせてあげますから」
そう言い、沖田は、千秋の腕を引き、
列の一番前へと戻った。
沖田は組員の方を向き、
通達した。
「えー、一番隊のみなさん。
今日から一番隊と共に巡察に加わることとなりました、桜賀千秋さんです。よろしくやってくださいね」