新撰組綺談~悠月ナ草~



問屋の物陰の方から

刀をむき出しに、襲いかかってくる男。


(沖田さんが、危ない!!!)



そう思ったが、

相手の男から漂う明らかな殺意で
千秋の足は、まるで地面にぬいつけられたように動かなかった。



肩が震える。

動けない。




…だが、隣にいる沖田は違った




沖田は、千秋の頭をポン、と撫でたあと
安心させようと
今まで聞いたことない優しくて、小さな声で


「下がっててください」





そう言い、

帯刀していた刀を抜き、

疾風のような素早さで

相手の男を斬り捨てた。



「ぐぁぁあぁぁぁあぁ!!!!」


千秋には、まるで沖田が、抜刀して1歩踏みだしただけで
相手の男を斬っていたように見えた。







(ぁ…あぁ……っっ)



目の前に広がる、赤い鮮血。

数秒前には
同じ息をしていた人間。


千秋はその光景を見て、言葉にならなかった。




だが言葉にならなかった要因に、もう一つ理由がある


(―――――沖田さん、今、
笑いながら、殺してた…!?!?)




千秋ははっきりと、見た


男に向かうなかで見た

沖田の顔。


……まるで、人を斬ることが楽しいかのような






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