新撰組綺談~悠月ナ草~
「隊長、お見事です」
沖田の近くにいた数人の新撰組組員が、
言った。
沖田は刀を一振りし、刀に付いていた血を払った。
……これが、幕末の時代
生きるも死ぬも、いつどんなときでもわからない時代。
現代みたいに、明日が来ることが確定されている時代じゃないんだ
……決まられた安全は無いんだろう
「千秋ちゃん、大丈夫ですか?」
沖田が、声をかけてくる。
だが、その顔は今さっき誰かを斬ったようなことは忘れたような
“いつも通りの顔”だった。
その顔に、本能的な恐怖を覚えた。
(…ひっ!!!)
「い、いやぁぁぁあぁぁあ!!!!」
沖田は血のついた手を、千秋の方へ差し伸べた
「…………」
沖田は、隊服に、血をごしごしと拭いた。
もう一度、沖田は、手を差し伸べようとしたが
やめた。
千秋が全身で沖田を怖がっていたからだ。
「一番隊は今から屯所に帰ります。
……千秋ちゃんは最後尾でついてきてください。」
沖田は、目を伏せながら
指示をだしたのだった