新撰組綺談~悠月ナ草~
千秋は近藤に言われるがまま自室に戻った。
すみわたる晴れた空の光を千秋は浴びながら、
縁側に座り、ぼーっと庭の盆栽を眺めた。
(……沖田さんが悪い訳じゃない、そんなことは自分のなかで分かってる)
決まられた法を破って、刀を持ち人に襲いかかろうとしてきたあの不逞浪士が悪いってことは、分かってるー…
きっと、人を斬ることはこの新撰組屯所にいる隊員たちは皆やっているだろう。
斬らなければ、斬られるまでだ。
…だが千秋自身にもわからない、理由の無い、心の中で飲み込めない“何か”があった。
すみわたった空とは反対の気持ちだ。
ゴーン、ゴーン。
屯所内で、鐘の音が鳴り渡る。
丁度、正午辺りになったところだろうか。
ここに来た初日、近藤が午前6時、正午、午後六時、午前0時に鐘が鳴ると言っていたはずだ。
「千秋さん、入るぞ」
近藤が、襖を開け、入ってきた。
片手には、お盆を持ち、そのお盆の上には
おにぎりがさらに乗っていた。
「近藤さん…」