新撰組綺談~悠月ナ草~
「千秋さん、総司のことをどうか、怖がらないでやってくれるか」
近藤は、空を見上げ、おにぎりを頬張りながら、話す。
近藤は、きっと千秋のことも気になるが、総司のことも気になるんだろう。
「はい…」
「千秋さんが来てから、総司が久々に楽しそうなんだ。きっと、千秋さんに興味がわいてるんだろう」
「でも、斬るとかなんとか言ってましたが」
「あぁ、あれはまあ、総司の照れ隠しみたいなもんだ」
ワハハと笑う。
…きっと近藤にはかわいいかわいい息子のように見えるんだろうな。
(私から見たら照れ隠しには全然見えませんがっ!?)
「千秋さんの住んでいた時代はどうか分からないが、この時代は刀を持った輩(やから)が出回るのは、いたって普通だ。」
「…はい、」
「現に、総司が斬ってなければ総司が斬られているし、きっと総司が斬らなくても他の組員たちが斬っていることだろう」
「そうですね…
いや、本当ごめんなさい。心配かけて。
…沖田さんが悪くないことは、分かっているんです
でも死体を見てしまって、気が動転してしまっていて…沖田さんを拒絶してしまいました
また沖田さんに、謝罪し、仲直りしに行こうと思います」
千秋の言葉を聞くと、近藤は、安心したように息をはいた。
「よかったよかった。」
千秋は、謝ろうと心に決めた。
誰だって、人に拒絶されたら悲しいから。
近藤は、千秋の頭を撫でた。
少し、二人の間に穏やかな空気が漂い始めた頃、
千秋は、近藤に問いかけてみた。
「…近藤さんって、女性なれしてないはずのに私にもう慣れていますよね」