新撰組綺談~悠月ナ草~
"その女の子が亡くなっているのを、誰かが見つけたみたいなんだけどね、
その女の子の手には、赤く光る、恋人からもらった草が握られていたんだって。
その草は、悠月ナ草(ヨヅキナソウ)っていうんだ。"
”へええ…”
”だけど人々は悠月ナ草が光るのを不気味と思って、嫌がったみたいなんだ。
捨てたら、女の子の怒りで祟(たた)られると思ってね?”
”たたられる、ってなに?”
”うーん、簡単に言うとバチがあたるっていうことだよ。”
”それでそれで?”
”その悠月ナ草は、どこかの神社におさめられているらしいよ。
だけど、光る悠月ナ草を恐れた人達が悠月ナ草をせんじて飲むと、女の子が恋人と再開できなかったっていう怒りが体に写って死んじゃうっていう言い伝えをつくっちゃってね…
だからね、
絶対に千秋は赤く光る草があっても、食べちゃいけないよ”
”草なんて、食べないよ!”
千秋はぷくーっと頬を膨らませる。
”千秋はいい子だね”
”うん!”
おじいちゃんがまた頭を撫でてくれる。
それは、もう今では味わえないぬくもりだ。