新撰組綺談~悠月ナ草~





自分の存在を見てくれと言わんばかりにこんこんと夜の闇を赤く照らす、

提灯。(ちょうちん)






千秋は、夜の紫前町を、近藤と斎藤と沖田と歩いていた。


前に近藤と歩く沖田を、少し見つめる。


(怖がちゃったこと、謝りたい。そして、かんざしありがとうって言いたい。)




千秋は沖田の背中に手を伸ばす。

「沖田さ……」



声をかけようとしたが、花魁(おいらん)のような、舞妓さんのような女性が沖田と千秋の間を通り過ぎてしまった。




千秋のわずかな声は、沖田には届かず、
伸ばした手を引っ込めた。


(話しかけるチャンス、逃しちゃったなあ)






少し、しょぼんとして地面に視線を落とす。




すると、頭上から温かい手がぽん、と頭の上に置かれた。

その暖かい手の持ち主は斎藤だった。




「頑張れ。まだ総司と話すチャンスはいくらでもある。」




斎藤はそう言って微笑んでくれた。









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