新撰組綺談~悠月ナ草~
千秋はおじいちゃんの話を思い出しながら、
再度赤い草を見つめる。
「これが、その悠月ナ草なのかな…いや、でもこんなおとぎ話現実にあるわけ……」
と思うが、ここはちょうど神社だ。
(まさか、まさか、ね…)
千秋は赤い草に背を向ける。
だがしかし、背を向き、目をそらすほどなぜかその草のことが気になった。
光る草に、手を触れる。
「あたしなんて、誰も必要としてない…自分が邪魔な存在になるだけなら、死んだほうがいい…どうせ死ぬなら、おじいちゃんの思い出がある死に方をしたい…」
―――……飲んだら、死ぬ赤い草、悠月ナ草…
(……)
なぜか、赤い花は千秋を待ち望んでいるかのように、あやしく光る。
(確か、煎じて飲むっておじいちゃんは言ってたけど)
煎じるために家に帰りたくない。
どうせ家に帰っても待っているのは、なげいている両親と、変わらない現実だけだ。