絶対私が取り戻すから…
「お前なら少しは俺の気持ちわかってくれそうだって思った。」
「なに?」
「俺な、『親父』いねーんだわ。母子家庭って奴?」

私はなんて返事をしていいかわからなくて、ただ頷いた。

「俺の親父って、DV親父。
  母親が、殴られてるの小さい頃から見てきた。幼稚園の時から俺の事だけは殴らないように守って来てくれた。
でも、母親、離婚するまで俺を必死に守ろうとしてたんだ。
 俺は成長して、母親の身長も越して。親って、ガキの頃は憧れじゃん?でも、成長すれば恋愛感情とか抱かなくても、母親は女性だって分かるじゃん。
   だから、すごく辛かった。男だからって思っても、酔っぱらいの親父には勝てなくて。
 腹、蹴り飛ばされる。だから、離婚してうれしいって思ったんだ。苗字は、いろいろめんどくさいから今はそのまま。俺はあいつの名字が大嫌い。俺はこの名字が大嫌い。」


途中から、愁は涙をこらえているかのように声が震えていた。
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