戯言、譫言、絵空事
 
言霊



 好き。

 好き。好き。

 大好き。

 愛してる。

 アイシテル。



 ――これは、呪文だ。



 思う度、口にする度、堕ちていく。
 どこまでも。
 深く。深く。
 誰の手も届かないところへ。

「   」

 愛しい名を口遊んで。
 想いを込めた睦言を繰り返す。

「好きだ」

「大好きだよ、   」

「   、愛してる」

「   」

 オレの声しか聞こえなければいい。
 オレの声しか届かなければいい。

 ずっと、オレの傍にいて。
 ずっと、オレだけの君でいて。

 そんな想いを込めて唇に乗せる。

「どうしたんですか?」

 銀灰色の瞳が、まっすぐにオレだけを見詰めてくる。
 そんな君が可愛くて、ぎゅっと抱き締める。

「今日は、そんなことばかり云ってますね」
「君が好きで好きで仕方ないんだ」

 言葉にしてもし尽くせない。
 溢れ出る想いに比例して、言葉も溢れてくる。

「……嬉しいですけど、でも、余り云われすぎると恥ずかしいです」
「それでいいよ」

 はにかむ君に、口吻をひとつ。
 愛おしい君に、愛の言葉をたくさん。

「愛してる」
 

2006/0922
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