戯言、譫言、絵空事
 
sleep


 目を閉じて。
 瞳に映るのは。
 闇。

 目を開けて。
 瞳に映るのは。
 窓から差し込む月明かり。

 その静かな光りに照らされて。
 僕たちは、狭いベッドで身を寄せ合って眠っている。

 朝が来れば、夜は訪れる。
 夜が来れば、朝は訪れる。

 だけど。

 目を閉じてしまったら。
 この目は開くのだろうか。
 この目に光りは映るのだろうか。
 この目に、君は映るのだろうか。

 僕たちは、いつまでこうしていられるのだろう。
 繋ぎ合わせた手は温かい。
 でも、触れるまで温かさは理解らない。
 触れなければ、知ることは出来ない。

 だから。

 時々怖くなる。

 眠ることが、怖い。

 目が醒めて。
 君が居なくなっていたら、と。
 考えてしまう。

 優しい口吻も。
 愛おしい熱も。

 全てが消え去ってしまっているのでは、と。
 考えてしまう。

「眠れないのか?」

 優しい君は、僕をその腕で包んでくれる。

「こうすれば眠れるよ」

 ――どうか。

 この目が醒めますように。
 この目に光りが射しますように。

 この目が醒めても、彼がここに居ますように。


2006/11/01
< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop