先生、好きです。


「おもしろい子だね。」

ただ一言、そう言って。


でも、さっきの笑いとは違う顔だった。


今の笑顔は、まるで心臓を射抜かれそうな…鋭くて妖美な視線が、あたしを動けなくさせていた。


《次は、千頭川、千頭川────…》


「さあ、降りるよ。」

「えっ?

あの、貴方もここで?」

「そう。

僕もここ。」


電車のドアが開くと、男の人はあたしの手を引いてくれた。


(優しい……)


その優しさが、純粋にとても嬉しかった。


「じゃあね、柚芽。」

あーあ、せっかく会ったのに…。

名前も知らないイケメン様、行っちゃうんだ…。

15分後、本当に会えるのかなぁ…


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