佐伯先生×ゆあちゃん【短編集】
「きみはヤギか」

「め、メー」

真似てどうする。

「本当はどうしたんだ」

「…おきたら、きえてた」

こちらは本当らしい。
目を見て言えている。

「よく探したのか?」

僕はその辺りのプリント類いを漁る。

「いっぱい、いっぱい探した、それでもなかったの…」

そんなに目を潤ませて言われたら、資料のことはどうでもよくなる。
代わりに唇でももらっておこうかと彼女にそっと近づいたら…

「ゆあ〜 あんたどうせここにいるんでしょ?」

勢いよくあけられた扉が開けられ、くるりと反転した。

横山くんが研究室に入って来た。
彼女はゆあと付き合うようになってから度々ここに出入りする。

「あれ? なんかお邪魔した?」

「…」

彼女は僕の邪魔しかしない。
まぁなくしてしまったことを口実に、居残りをさせればいいか。

< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop