四百年の恋
 「だから日を改めることにしたんだ。きちんとした付き合いをするには、まず姫の保護者的立場にある安藤に伝えるのが筋だとも考えたし」


 「そう……なのですか」


 「というわけで、これからよろしく頼む」


 「それって、私が冬悟さまのお話し相手になるということですか?」


 「ん……。まずはそこからだな」


 「私でよろしいのなら」


 ……徐々に姫は冬悟のそばにいることが多くなった。


 叔父はもう姫が、冬悟の室(妻)になることが内定したかのように喜んでいるのだが。


 冬悟側からはそのような要求はなかったし、姫は過度な期待は禁物だと思い自らを戒めていた。


 (もしかしたら本当に、私を話し相手として望んでいるだけなのかもしれないし)


 それに……。


 ある晩たまたま、姫は叔父夫婦の会話を耳にしてしまった。


 「……焦らずじっくり、だ。冬悟さまが姫に好意を持っているのは間違いないのだから」


 叔父は声が弾んでいる。


 「ですが、もしこのまま話がまとまっても、姫は側室止まりではありませぬか?」


 叔母が心配そうに告げた。


 「うむ……」


 「冬悟さまが殿のご養子となられたあかつきには、京の都よりご正室をお迎えになるのが福山家ご当主の慣習」
< 115 / 618 >

この作品をシェア

pagetop