四百年の恋
 「側室でもいいではないか。垢抜けない田舎武士の正室よりは断然ましなはずだ」


 「ですが……」


 姫が福山冬悟に気に入られたと確信して上機嫌な叔父に対し、叔母は姫の将来を考えると不安でたまらない様子。


 「案ずるな。姫の実家もこの話には乗り気なのであろう?」


 「我が弟は、もしもお話がまとまるならば。姫の格を上げるために、姫を我が家の養女に迎えてから冬悟さまに嫁がせたほうがと考えているようです」


 (……そうなのだ。どんなに望んでも、望まれても。私の身分では、冬悟さまの正室にはなれない)


 このまま冬悟に福山家次期当主の座が約束されるならば、現当主・冬雅のご正室の親戚筋にあたる、京の公家の姫君を降嫁させる計画があると風の噂に聞いた。


 そうなると姫は、日陰の身。


 (ご寵愛が高貴な姫君に移ってしまい、みじめな毎日を送ることになるかもしれないし。心を繋ぎとめることができたとしても、周囲の風当たりは強くなるだろう)


 いずれにしてもろくなことにはならないと思い、姫は絶対に多くは望むまいと心に誓っていた。
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