四百年の恋
 「どうして他所の国まで、荒らしに出かけなければならないのですか?」


 「もう日本は、全国統一が成された。新たな領土を確保して、臣下への褒美を確保しなければならないのだろうな」


 「冬悟さまも、朝鮮の地で……。罪もない朝鮮の人々を斬らなくてはならないのですか?」


 「いや。私の役割は、肥前名護屋城(ひぜんなごやじょう;現在の佐賀県唐津市)での、後方支援部隊らしい。渡海して朝鮮まで攻め込まずには済むようだ」


 朝鮮の地へ渡海して直接戦に臨むと、負担も大きくなるし、危険も高くなる。


 だから名護屋城に留まれるのは、幸運といえば幸運なのだが、


 「とはいえ間接的に、戦の手助けをしているには変わりないことです」


 「姫」


 「不必要な戦など、やめればいいのに」


 姫は口にした。


 理不尽に攻め込まれての防御の戦ならば、まだ理解できる。


 必要もないのに他国に因縁をつけて、攻め込むなど……狂気の沙汰のような気がした。


 朝鮮は小国だけど、その背後には大国の明(みん;中国)が控えている。


 朝鮮が滅亡の危機ともなれば、次は我が国……と危機感を抱き、援軍を派遣させるかもしれない。


 明が本気を出せば、我が国など一ひねりでつぶされると思う。


 だけどこの国の誰も、太閤の意向には逆らえない。
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