四百年の恋
 「四年生じゃないの?」


 この講義は、三年生が主に受講する。


 ごく稀に、昨年単位を取得し損ねた四年生が受講していることもあるが。


 「でも4年生でも、だいたい顔見知りだよね? うちの学科、そんな大人数じゃないし」


 「そうだけど……」


 「出席を取る際に、よく聞いておこう」


 程なく担当教官が入出した。


 事前に提出した「受講希望届」を元に、出席簿が作成されている。


 まずは三年生から。


 同学年は、全員顔見知り。


 四年生も数名いたけれど、該当者なし。


 (ならばあの男の人は、何者なんだろう)


 真姫の疑問がさらに高まったその時。


 「福山、龍之介(ふくやま たつのすけ)くん」


 「はい」


 名前が判明。


 福山。


 これから学ぼうとしている戦国大名・福山氏と同じ名字だった。


 (まさか、子孫じゃないよね)


 (福山家の子孫は東京在住のはずだけど)


 そんなにありふれてはいないけど、ただの偶然の一致だと思い。


 みんな何気なくやり過ごしていた。


 (たつのすけ、だなんて、クラシカルな名前)


 真姫はそんなことを考えていた。
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