四百年の恋
♪~
幻想的な管弦楽器が奏でられ、花見の宴は始まった。
去年は脇役の一人でしなかった月姫が、今年は主役の一人。
重臣たちの挨拶が一段落したのを見計らい、冬悟に伴われて、当主·福山冬雅の前に初めて進み出た。
初の拝謁。
「面(おもて)を上げよ」
冬雅に声をかけられ、姫はようやく顔を上げた。
「……」
初めて間近に目にする冬雅の顔は、さほど冬悟には似ておらず。
(夜に君臨する月が、光で大地を満たすような魅力を持った冬悟さまに比べると。どこか荒んだ雰囲気を身にまとっておられる)
姫の印象はそのようなものだった。
「冬悟が京の公家の姫との縁談を断り、是が非でも正室に迎えたい姫がいると言うものだから、最初は驚いたのだが・・・」
……殿の声はどことなく、冬悟に似ていると姫は感じた。
(母君は違うとはいえ、やはり兄弟だから……)
「もしも冬悟に相応しくない娘だったら、当主である私の命令で、却下してしまうつもりだったのだが」
姫は息を飲んだ。
「そなたのような美しい姫が側にいるのなら、冬悟も京女に心を動かされないはずだ」
美しい。
以前の月姫だったら、そんな誉め言葉頂戴することは稀だった。
(冬悟さまが先の出陣の折、京に立ち寄った際に購入してくれた、この最先端の流行の着物。今身にまとっている、このきらびやかな着物かもしれない)
勝手にそう結論付けていた。
幻想的な管弦楽器が奏でられ、花見の宴は始まった。
去年は脇役の一人でしなかった月姫が、今年は主役の一人。
重臣たちの挨拶が一段落したのを見計らい、冬悟に伴われて、当主·福山冬雅の前に初めて進み出た。
初の拝謁。
「面(おもて)を上げよ」
冬雅に声をかけられ、姫はようやく顔を上げた。
「……」
初めて間近に目にする冬雅の顔は、さほど冬悟には似ておらず。
(夜に君臨する月が、光で大地を満たすような魅力を持った冬悟さまに比べると。どこか荒んだ雰囲気を身にまとっておられる)
姫の印象はそのようなものだった。
「冬悟が京の公家の姫との縁談を断り、是が非でも正室に迎えたい姫がいると言うものだから、最初は驚いたのだが・・・」
……殿の声はどことなく、冬悟に似ていると姫は感じた。
(母君は違うとはいえ、やはり兄弟だから……)
「もしも冬悟に相応しくない娘だったら、当主である私の命令で、却下してしまうつもりだったのだが」
姫は息を飲んだ。
「そなたのような美しい姫が側にいるのなら、冬悟も京女に心を動かされないはずだ」
美しい。
以前の月姫だったら、そんな誉め言葉頂戴することは稀だった。
(冬悟さまが先の出陣の折、京に立ち寄った際に購入してくれた、この最先端の流行の着物。今身にまとっている、このきらびやかな着物かもしれない)
勝手にそう結論付けていた。