四百年の恋
「こんな立派な花を残され、いつまでも殿に愛でられるだけでも、先代の奥方様は幸せなのではないでしょうか」
「そなたはそう思うのか」
「はい」
ちょっと出すぎた真似をしたかもと、姫は少し心配になっていた。
(叔父の話によると、殿はかなり気難しいとのこと)
冬悟とはあまり似てはいないものの、横顔はどことなく冬悟の輪郭と似通っていた。
余計なことを言って怒らせてしまったかと不安げに、姫は恐る恐るその顔色を窺った。
ところが。
「そう言ってもらえると、少々気が楽になった」
冬雅はそっと笑みを浮かべた。
怒らせたりしなくてよかったと、姫はほっと一息。
……。
その後しばらく、共に桜を眺めていた。
「……しかし、むなしいものだ」
しばしの沈黙の後、絶え間なく舞い散る花びらを見つめながら冬雅がつぶやいた。
「何がでしょうか?」
「満開のそのすぐ後には、花は散り始める。それはまるで、人の世のよう。まさに春の夢のごとしと言うか、永遠などどこにもないことを改めて思い知らされるようで……むなしいのだ」
「そなたはそう思うのか」
「はい」
ちょっと出すぎた真似をしたかもと、姫は少し心配になっていた。
(叔父の話によると、殿はかなり気難しいとのこと)
冬悟とはあまり似てはいないものの、横顔はどことなく冬悟の輪郭と似通っていた。
余計なことを言って怒らせてしまったかと不安げに、姫は恐る恐るその顔色を窺った。
ところが。
「そう言ってもらえると、少々気が楽になった」
冬雅はそっと笑みを浮かべた。
怒らせたりしなくてよかったと、姫はほっと一息。
……。
その後しばらく、共に桜を眺めていた。
「……しかし、むなしいものだ」
しばしの沈黙の後、絶え間なく舞い散る花びらを見つめながら冬雅がつぶやいた。
「何がでしょうか?」
「満開のそのすぐ後には、花は散り始める。それはまるで、人の世のよう。まさに春の夢のごとしと言うか、永遠などどこにもないことを改めて思い知らされるようで……むなしいのだ」