四百年の恋
……。
その後しばらくの間、二人は桜の木々の間でじゃれ合い、ふざけ合っていた。
「やめてください。人が来ます」
「構わぬ」
捕まえようとする冬悟の腕から逃れながら、姫は庭園を駆け巡った。
酒の勢いもあり姫はいつもより大胆に、冬悟を誘うような素振りも見せた。
「こら、いい加減にしないと、せっかくの着物も台無しだぞ」
打掛(うちかけ;着物の一番上の部分)は脱いでいたので、姫は庭園内を身軽に動き回ることができたのだけど、別の桜の木の根元でついに捕まってしまった。
「えいっ」
「うわっ」
隠し持っていた桜の花びらを手のひらから放つと、花びらは紙吹雪のように冬悟の頭に降り注いだ。
「いたずらばかりする悪い子には、お仕置きするぞ」
姫はきつく抱きしめられ、もはや逃れられなくなった。
六尺(約180センチ)近くあって背の高い冬悟は腕も長く、たやすく姫を捕まえる。
「綺麗な月……」
追いかけ合うのに疲れて、二人は夜桜に囲まれながらふと空を見上げた。
満開の桜に合わせたかのように、満月が輝いていた。
若干、朧月夜。
ほんのりと桜を照らし、その光景はとても幻想的だった。
「月は、お前の象徴だな」
姫の名前、月姫の由来は。
生まれた時に見事な満月が輝いていたからだった。
ところが。
当主である冬雅の奥方が、都輝子(つきこ)という名。
偶然なのだが同じ「つき」という名前なので、畏れ多いと陰口を叩く者もいた。
その後しばらくの間、二人は桜の木々の間でじゃれ合い、ふざけ合っていた。
「やめてください。人が来ます」
「構わぬ」
捕まえようとする冬悟の腕から逃れながら、姫は庭園を駆け巡った。
酒の勢いもあり姫はいつもより大胆に、冬悟を誘うような素振りも見せた。
「こら、いい加減にしないと、せっかくの着物も台無しだぞ」
打掛(うちかけ;着物の一番上の部分)は脱いでいたので、姫は庭園内を身軽に動き回ることができたのだけど、別の桜の木の根元でついに捕まってしまった。
「えいっ」
「うわっ」
隠し持っていた桜の花びらを手のひらから放つと、花びらは紙吹雪のように冬悟の頭に降り注いだ。
「いたずらばかりする悪い子には、お仕置きするぞ」
姫はきつく抱きしめられ、もはや逃れられなくなった。
六尺(約180センチ)近くあって背の高い冬悟は腕も長く、たやすく姫を捕まえる。
「綺麗な月……」
追いかけ合うのに疲れて、二人は夜桜に囲まれながらふと空を見上げた。
満開の桜に合わせたかのように、満月が輝いていた。
若干、朧月夜。
ほんのりと桜を照らし、その光景はとても幻想的だった。
「月は、お前の象徴だな」
姫の名前、月姫の由来は。
生まれた時に見事な満月が輝いていたからだった。
ところが。
当主である冬雅の奥方が、都輝子(つきこ)という名。
偶然なのだが同じ「つき」という名前なので、畏れ多いと陰口を叩く者もいた。