四百年の恋
「そうだ、これを機にお前に新たな名を授けるというのはどうだ?」
「新たな名?」
「お前はこれから、状況の変移や立場が変わるにつれて、様々な呼び名を周囲から与えられるであろう」
確かに今でもすでに姫は。
実家に由来する「明石の方」とあだ名を付けられたり、これから安藤の叔父夫婦の養女になるのに伴い、一時的に安藤姓を名乗ることにもなるし。
そして結婚後は、福山家の一員に。
「だから、永久に変わることのない、私だけの呼び名をお前に与えたい」
「それはいったい?」
「月光姫」
「げっこうき……?」
姫は復唱した。
「どうだ?」
「まるで……楊貴妃みたいな響きです」
姫は少々戸惑っていた。
「月光を浴びるお前があまりに美しくて、思いついた名前だ」
「私には大袈裟すぎて、ちょっと恥ずかしいです」
「お前は自分を過小評価しすぎだ。少し自分に自信を持て」
「ですが」
「京女の華やかさも、肥前の遊女のあでやかさも、全て色褪せるような美しさを、お前は持ち合わせている」
「買い被りすぎではありませんか? 私にそんな」
「お前美しい。夜空に輝く月のように、これからも私を惑わし、癒し続けてほしい」
「冬悟さま」
再度、抱き合う二人。
月に照らされながら。
桜は常に散りゆくものではあるが、二人はこのままずっと離れることがないと信じていた。
「新たな名?」
「お前はこれから、状況の変移や立場が変わるにつれて、様々な呼び名を周囲から与えられるであろう」
確かに今でもすでに姫は。
実家に由来する「明石の方」とあだ名を付けられたり、これから安藤の叔父夫婦の養女になるのに伴い、一時的に安藤姓を名乗ることにもなるし。
そして結婚後は、福山家の一員に。
「だから、永久に変わることのない、私だけの呼び名をお前に与えたい」
「それはいったい?」
「月光姫」
「げっこうき……?」
姫は復唱した。
「どうだ?」
「まるで……楊貴妃みたいな響きです」
姫は少々戸惑っていた。
「月光を浴びるお前があまりに美しくて、思いついた名前だ」
「私には大袈裟すぎて、ちょっと恥ずかしいです」
「お前は自分を過小評価しすぎだ。少し自分に自信を持て」
「ですが」
「京女の華やかさも、肥前の遊女のあでやかさも、全て色褪せるような美しさを、お前は持ち合わせている」
「買い被りすぎではありませんか? 私にそんな」
「お前美しい。夜空に輝く月のように、これからも私を惑わし、癒し続けてほしい」
「冬悟さま」
再度、抱き合う二人。
月に照らされながら。
桜は常に散りゆくものではあるが、二人はこのままずっと離れることがないと信じていた。