四百年の恋
 ……。


 将来の夢を失った代償に、圭介は真姫を手に入れた。


 福山が消えたあの事件からだいぶ時が流れたが、しばらくの間真姫は抜け殻のようだった。


 圭介もまたケガのショックで、投げやりな毎日を送っていた。


 互いに立ち直るきっかけを求めていた。


 真姫には、圭介への贖罪の気持ちがあったのかもしれない。


 圭介の将来を奪ったのは自分が原因であると、自らを責め続けていた。


 同時に真姫は、心にぽっかりと空いた穴を埋めようともがいていた。


 福山の思い出を共有し、真姫の悲しみを受け止めてやることができるのは、圭介以外にいなかったのかもしれない……。


 圭介が福山のことを「ロシアンマフィア」だと勘違いして、真姫をキャンパスから連れ出そうとしていた時、福山に見つかってしまった。


 当然福山は、圭介から真姫を取り戻そうとした。


 ところがその際、福山は圭介の首に飾られた十字架のネックレスに恐れおののいた。


 異常な驚愕の果てに、福山は腐敗を始めた。


 そして「四百年前の福山城主・福山冬雅(ふくやま ふゆまさ)の弟で、無実の罪で自害させられた、福山冬悟(ふゆさと)」と名乗った。


 真姫は彼の最愛の女性であった、「月光姫(げっこうき)」の生まれ変わりであると。


 (冬雅が横恋慕して月光姫を冬悟から取り上げ、それが冬悟に無実の罪を着せた直接の原因であるとも……)


 なおも福山は真姫を求めるも、恐るべき事態に真姫は福山の手を振りほどき、圭介の胸へと飛び込んだ。


 福山は真姫の拒絶を受け入れ、悲しみを抱えたまま消えていった。
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