四百年の恋
 正月も過ぎて、二人はそれぞれの実家へと帰省した。


 圭介は真姫を札幌の自宅前まで送った際、真姫の両親に見つかってしまい、家に招かれ挨拶する羽目になった。


 父親は怖そうだったものの、初めての娘の彼氏の登場にどこか寂しそうだった。


 母親は娘にイケメン彼氏ができたことに大喜びで、料理を振る舞った。


 真姫が席をはずした際に、圭介が真姫の母親に聞かされたことは……。


 例の福山の一件の際、大学からのみならず警察からも真姫に連絡が入ったという。


 大学からしてみれば、聴講生とはいえ学生が突然の失踪。


 学内でもいろいろ噂になっていたので、念のために警察に通報したらしい。


 (福山と一番親しかった真姫にも調査の手が……)


 そこで警察が福山の家、受講届に添えられた住所を頼りに訪問したところ。


 ……そこは見渡す限りの原野だったらしい。


 圭介がかつて雇った探偵が調べたとおり、住民票も高校時代の成績資料も皆、他人のものへのなりすましだった。


 だが警察は福山の正体を、それ以上突き止めることはできなかった。


 オタク男がわざわざ、「彼は福山冬悟が、成仏できずに化けて出てきた姿」みたいな説明を警察にしたらしいのだが、当然警察が相手にするはずはなかった。


 福山失踪は、そのまま迷宮入りの道を。


 ……。


 (そんなことがあってかなり心配していたのだけど、俺と付き合うようになってから徐々に元気が戻ってきたと母親は言ってくれた)


 これからも娘をよろしく頼むと懇願され、圭介は使命感を胸に秘めた。
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