四百年の恋
 「あ、ありがとう……」


 真姫はぎくしゃくと静香に、お菓子の礼をしていた。


 今でも真姫が静香を苦手にしているのを圭介は知っていた。


 (俺にとっては静香はいい奴なんだけど、真姫とはどうもしっくりいかないらしい。互いに苦手にしているようだ。女同士って難しいもんだな)


 圭介は女二人の不仲の真の理由を知る由もない。


 その静香にお菓子をもらった直後、二人は互いに眠りに落ちてしまい、目が覚めたらもうそこは福山城の近くだった。


 「福山城……」


 門の前に降り立った、真姫が恐る恐る城を眺めていた。


 この位置からは門の影となり、天守閣の一部しか確認できないが。


 見学のスケジュールは、まず福山城内見学。


 その後夕方から夜にかけて、福山城公園の桜公園の散策も予定されている。


 今年はちょうど、桜が満開の時期。


 参加者はタイミングのよさに喜んでいる。


 だが圭介は、ふとしたことがきっかけで福山冬悟を刺激したりしないか、心配でたまらなかった。


 この周辺はもう、福山の勢力下であるような気さえしてきた。


 (奴は俺たちを、すでに監視しているのかもしれない)


 常に見られているような気配すら感じられた。
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