四百年の恋
 「こちらには、歴代当主とその一族の遺物の数々が展示されております」


 一行が案内されたのは、かつては倉庫として用いられていた部屋らしい。


 そこを改造して、今は福山家ゆかりの品々が展示されている。


 戦国時代の福山家成立の頃から、明治維新後の廃藩置県により福山家がこの地の支配権を失う頃のものまで、数多くの品々が時代順に並べられていた。


 「福山冬雅公。福山家その後の発展を決定付けた、最大の名君」


 プレートに記された文字を、圭介は口にした。


 そして冬雅関連の展示物を眺める。


 前半生の、贅沢できらびやかな品々。


 後半生の、質素かつ慎ましやかな品々。


 好対照だった。


 そして、


 「あの着物……!」


 真姫が指差したのは、


 展示コーナーの一番奥に飾られた、マネキンが着用しているその着物。


 時の経過によりかなり色褪せてはいるものの、当時の華やかな色彩が目に浮かぶようだった。


 「あの着物は、本当に冬雅公ご着用のものかは謎ですが、遺品として伝わっているものです」


 ガイドが教えてくれた。


 「当時、京で流行した、最先端のモードらしいです。今でこそ色褪せてくすんだ色をしていますが、当時は鮮やかな青系の色だったと推測されます」
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