四百年の恋
 「……」


 圭介はふと考えた。


 (これは冬雅公ではなく、福山冬悟が着用していたものでは?)


 「冬雅公は墓の発掘作業の結果、当時としてはかなり背が高かったと推測されますが、この着物の主はさらに高身長なのです」


 「どうしてそこまで分かるんですか?」


 「着物の丈から推察されます」


 「なるほど」


 ガラス越しに圭介は、着物を身にまとったマネキンをじっと見つめた。


 あの福山が着物を身にまとっている姿が目に浮かぶ。


 (鮮やかな青系の色が、あいつにはよく似合う……)


 すると、圭介の妄想をかき消すかのように、


 「ちょっとちょっと! これ吉野くんに似てない?」


 後ろのほうで同級生の麻美たちが騒いでいる。


 「俺に似てるって、何が?」


 圭介は振り返り、騒ぎの正体を確かめたところ……、


 そこには歴代当主の、頭部の復元モデルが展示されていた。


 歴代当主は死後、福山城の裏の墓地に並んで埋葬されている。


 土葬なので骨は残り、こうやって復元可能となったらしいのだが……。


 圭介が似ているといわれたのは、なんと第三代当主の福山冬雅その人。


 月光姫と福山冬悟を引き裂いた悪者。


 いきなりの指摘に、圭介はかなり動揺してしまった。
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