四百年の恋
 「何をするのです!」


 ガイドも仰天した。


 が、当然鍵が掛かっており、展示物を手に取ることはできない。


 すると真姫は、さらに驚くべき行動に出た。


 展示ケースの脇に置かれていた、パイプ椅子。


 警備員や学芸員が一休みの際に用いるものらしいのだけど、今は無人。


 真姫はそのパイプ椅子を手に取り、大きく振り上げた。


 「やめなさい!」


 ガイドの制止を振り切り、真姫はパイプ椅子で展示コーナーのガラスを叩き割った……。


 ガシャーン!!


 信じがたい音があたりに響き渡る。


 「きっ、君! 何てことをしてくれたんだ!」


 展示コーナー担当の学芸員も飛び出してきた。


 そして真姫を取り押さえようとしたのだけど、真姫はすり抜けて展示物に手を伸ばした。


 目指すは地球儀の付いた引き出し。


 真姫は引き出しを三つとも引っ張り出した。


 中は空っぽ。


 なのに真姫は内部に手を伸ばし、なにやらがちゃがちゃいじっていた。


 すると……。


 「おい……」


 引き出しの底板だと思われていた部分が、すーっと開いた。


 そこも引き出しになっていたのだ。


 「隠し引き出しか」


 出てきたのは……紙が数枚。


 「よかった……」


 真姫は書類一式を抱きしめ、安堵の表情を浮かべていた。
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