四百年の恋
 「そなたがおとなしく、私のものになれば」


 「殿……?」


 西日が差し込む広間の畳の上。


 姫は抵抗することもできず、畳に押し倒され。


 (体と引きかえに、殿は冬悟さまの命を救うと……?)


 触れられたくないが、逆らえば冬悟は間違いなく命を失うのは姫にも想像がつく。


 (嫌だけど……。冬悟さまの命を奪われるよりは……)


 姫は目を閉じた。


 すると、


 「震えて嫌がる女を脅して抱くのは、風流ではない」


 冬雅は不意に姫から離れた。


 「……」


 姫は冬雅の反応を確かめながら身を起こす。


 「今宵は安藤の屋敷に戻って、ゆっくりしてるんだ。風呂にも入ったほうがいい」


 大沼から馬を飛ばしてここ福山城まで舞い戻ってきた姫は、全身泥まみれだった。


 何より冬雅が冬悟のことをどうするつもりなのか想像が付かず、不安は募るのみだった。
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